さすらう(主に下半身が)

東南アジア旅行での(主にえっちな)体験談です。

日本のサラリーマンたち、ごめんね、ごめんね。

ぺこです。

 

朝早い列車で、新宿から羽田空港へと向かったのです。

 

こんな時間なのに、列車はスーツにコートにマスクのサラリーマンたちでいっぱいでした。

 

みな張り詰めた顔をしています。

 

マスクをしていてもわかるのです。

 

いま、この人たちに、なにか優しい言葉をかけてください、と、要求したら、一瞥だけで無視されてしまうだろうなって事が。

 

そんな早朝の列車に、リュックを背負って、サンダルを履いたわたしが乗りました。

 

もしかしたら、この旅でいちばん、異邦人だったのは、この瞬間かもしれません。

 

知らない人たちに囲まれて、いま、わたし、旅をしている。

 

そんな気がしたのです。

 

そして、わたしが未だ価値ある日本円を元手にして、アジアで楽しめるのも、この人たちのお陰だと思うと、自然に、わたしは下を向いてしまいました。

 

張り詰めて、張り詰めて、決して壊れないで。

 

日本円を、日本円を、守って下さい。

 

なんという国でしょう。

 

これでも世界でトップクラスの恵まれた国だというのですから。

 

なんという事なんでしょう。

 

南の島に遊びに行かないとしたら、この国の男たちは、いったい何をしているのでしょう?

 

下を向いて、寒さに首を縮めながら、一点を見つめている。

 

この列車の着く先に、いったい何が待っているというのでしょう。

 

張り詰めた空気、やりきれない思い、家族の寝顔(朝と夜)。

 

電光掲示板と、青い町。

 

そして、同じように寒さに首を縮めた同胞たちの顔、顔、顔。

 

マスク、イヤホーン、革靴、コート、バッグ、メガネ、愛してる、申し訳ございません、報告致します、以上です、判を押してください、お先に失礼致します、おはようございます、おやすみ、おやすみなさい...

 

我知らず、声が聞こえてくるようでした。

 

この人たちに、南の島の、砂浜の、白い砂を、触らせてあげたい。

 

どこまでも続く青い海をぼーっと眺めながら、座って、その砂に、手を触れると、濡れていて、暖かい。

 

白い砂と、青い海と、青い空は、どこまでも続いていました。

 

わたしの想像の世界で。

 

目を開けると、黒い靴、白いマスクに、白いイヤホーン。

 

なにかが間違っている。

 

そんなことを、思いながら、早朝の列車に揺られていました。

 

精力剤と、オカモトのコンドームと、ペペローションと、ハーブ吸引用の喫煙具と、ピンクローターを満載したリュックを手元に置いて、目の前のサラリーマンの草臥れた革靴を眺めながら、わたしは、列車に揺られていました。